みなさんの中には、広告・宣伝の仕事はイメージできるけれど、広報の仕事って何をするのだろう?と思われている方も多いのではないでしょうか。少し知識のある方は、マスコミにプレスリリースを送ったり、ホームページを作ったりする部門だろう?くらいに思われているかもしれません。もちろん、行為そのものはそれで間違いではないのですが、本質は別のところにあります。

具体的なイメージを持っていただくために、過去に私が行った仕事の事例をひとつご紹介いたしましょう。

私が机ひとつで京都造形芸術大学の東京連絡所として動き出して2年目の2001年の春のことでした。京都造形芸術大学では、1998年に開設した芸術の通信教育が人気を呼び、東京・人形町の8階建オフィスビルの1階から3階を借りて、「東京サテライトキャンパス」を開設することになりました。

さて、もしもあなたが広報担当者だったら、このことをどのように世の中に発信するでしょうか?

当時、京都造形芸術大学の東京における知名度は低く、そんな地方の一大学が東京のオフィスビル3フロア借りて東京の拠点として始動しますと言っても、世間からは見向きもされないのは明白です。

そこで私は、他大学の動向をリサーチし、埼玉大学が八重洲に、慶応義塾大学が丸ノ内に、一橋大学が神田にキャンパスを構える動きについて調べ、それらの情報を京都造形芸術大学のキャンパスと合わせて地図に落とし込み、「大学の都心回帰」というひとつのトレンドとして発信しました。この発信はとても大きな成果を生み、オフィスビルで油絵を描く年配の学生たちの様子も報道関係者の興味を引いて、その後2〜3年にわたり、大学の都心回帰の話題の際は必ず人形町の京都造形芸術大学に取材が入ることになりました。何人もの友人たちからも「新聞で見たよ」とたびたび声をかけられ、世間さまに情報が届いた実感のある案件となりました。

このように「広報」の仕事は、センスと創意工夫の力が問われる仕事です。そして、その力は、物の本を読んで身につくような簡単なものではなく、多くの現場経験を経ないと成せないものです。

それでは、「広報」の仕事とは具体的にどのようなことをするのでしょうか。主なものをかいつまんで以下に列挙してみます。(このページは追々書き足して参ります)

1.基本情報の整備・管理

その組織・各部署の正式な名称をはじめ、ロゴマーク、キーカラー、キービジュアル、組織やその成果物に関する説明文や写真、動画など、その組織の「らしさ」を反映させた基本情報を整備、確定させて、発信する時にバラつきが発生しないように管理します。

2.オウンドメディアの制作

ホームページ、Webマガジン、ブログ、SNS、パンフレット、広報誌、ニュースレターなど、その組織独自の発信媒体を制作、育成し、発信します。

3.パブリシティ(Publicity)

2.の「オウンドメディア」がその組織独自の発信媒体を通じた発信であるのに対して、パブリシティはテレビや新聞、ラジオなど既存のメディアを通じて世の中に情報を発信するものです。よそ様の媒体を通じた発信なので、その情報は本当にニュース性があるか、世間さまにご興味をいただける内容かという観点が必要ですが、この点をきちんと理解できている広報担当者は少ないというのが印象です。

このカテゴリーで広報部門が行う活動は、記者発表、記者懇談会、取材誘致、プレスリリースの配信、PRイベントの開催などがあります。

4.日々の情報の取材、発信、アーカイブ

その組織らしい活動の要所要所でパブリシティをかけたり、自分たちでその現場を取材し、写真や動画、文章などでまとめ、オウンドメディアを通じて発信します。それらの取材データや、パブリシティを通じて掲載された新聞・雑誌の記事、オンエアデータなどは、その組織の歴史の記録財産となります。

5.メディア・リレーション(Media Relation)

広報活動がうまく運ぶほど、新聞や雑誌、テレビなど既存メディアからの取材依頼や表記確認依頼等の問い合わせが増えていきます。メディアからちょっとした相談なども受けるようになり、その際に「近々こんな現場があります」「こんな人物がいますがご興味ありますか?」とご提案できてこそ広報担当者というものでしょう。そのためには、その組織のホットな現場情報を把握しておくことと、新聞や雑誌、テレビ(報道・制作)の方々の目線を身につけないとなりません。

6.危機管理

どのような組織であれ、常に順風満帆というわけにはいきません。時に事件、事故、不祥事、ネット炎上などが発生することがあります。その際は、組織として社会にきちんとした説明責任を果たさなければならず、広報はその対応の矢面に立つことになります。危機管理は一般にその事態が発生した時の対応のものと思われていますが、私は日頃からの取り組みがとても重要と考えております。

このカテゴリーには、その組織にとって重要な立場の人物(「元」を含む)の訃報対応や、クレーマー対応なども含まれます。